2013年06月29日

鉄道事業戦略で考える遊園地経営

 拙作、鉄道事業戦略において売上のある関連事業は、発展した場所に建設すればそれなりに収益を上げることができます。しかし、遊園地は例外でリスキーな物件です。今回は実際に鉄道会社が運営する遊園地と対比させながら、考え方を纏めましょう。



【遊園地から得られる収入】
 遊園地の売上はその駅に行き着くレジャー客数に比例して増加します。そのためにはお客さんを増やすのが何より重要で、沿線の住宅人口が充分に多くなければなりません。なお、同一駅で景勝地等他のレジャー施設がある場合は、それぞれのレジャー客需要で按分して計算されます。

 会社が得られる収入は、遊園地そのものの売上と、遊園地に向かうレジャー客の運賃になります。会社としてはこの二つから得られる収益の最大化を目指します。


【どの駅に設置するべきか】
 なるべく多くの住宅地からアプローチしやすい場所、つまり交通に至便な場所に建設するべきです。多くの通勤客の集まる商業地に建てられれば理想ですが、そう単純な話ではありません。

 まず、繁華街の地価は非常に高く、そのような場所は遊園地よりもオフィスビルやデパートの方が利回りが良いでしょう。次に、近辺の列車の混雑が激しく、周辺2,3駅は定員過多による運賃取りこぼしが発生しているかもしれません。ここへさらにレジャー客を乗せては、運賃取りこぼしが少々もったいない。

 では、実際の鉄道会社はどこに建設しているのでしょうか。例えば、西武鉄道なら西武園ゆうえんち、阪急電鉄なら宝塚(閉園しましたが)、といずれも繁華街から離れた郊外に立地しています。鉄道事業戦略でも郊外へ延びる路線の終点に遊園地を作ってみましょう。地価が安いのでずっと安く建設できます。また、郊外へ向かうほど乗車率は減るのでレジャー客の運賃取りこぼしは発生しにくくなります。商業地ほどではないにしろ、それなりの交通の便も確保できるでしょう。

 じゃぁ、中間駅あたりでもいいじゃないか、と言う意見もあるかもしれません。下図をご覧下さい。
themepark01.png

 確かに、中間駅でも運賃取りこぼしや乗車率オーバーは発生しにくいでしょう。しかし、レジャー客が比較的短距離しか移動しないので運賃収入は少なくなります。中間駅に設置する場合は大きな都市を結ぶ路線に設置するときのみにしたほうがよさそうです。京阪電鉄のひらかたパークはこの例に当てはまるでしょう。


【景勝地等との競合】
 競合が如実に現れるのが、この施設です。遊園地を作った後、景勝地へ向かう路線を新設・延伸したら、そちらの方へレジャー客が流れてしまい閑古鳥が鳴くという事態も起こりえます。他の観光施設との位置関係は非常に重要です。

 鉄道事業戦略のレジャー客は、近い方・大観光地(需要の大きい方)を選好する傾向があります。ですので、大きな観光地からはなるべく離して設置すると、競合はある程度防げるはずです。具体例を挙げるのは中々難しいのですが、東武動物公園がこの例に当てはまるのではないでしょうか。もっと突き詰めれば、そもそも景勝地への路線を作らないというのも一つの選択肢になります。

 虎穴に入らずんば虎児を得ず。逆に景勝地に遊園地を併設する戦略もあります。大観光地のレジャー客の一部に遊園地に来てもらう算段です。実際、レジャー客の多さを確認してから建設できるので、リスクを最大限抑える事ができます。また、既存のレジャー客の多さから建設後直ぐに利益を上げられる可能性が高いのも大きなメリットでしょう。現実の鉄道会社は多かれ少なかれ観光地近辺に遊園地を設置した例が多いようですが、近鉄の志摩スペイン村がその典型といえるのではないでしょうか。



 現実の鉄道会社の経営を参考にすれば、鉄道事業戦略の攻略のヒントが隠されているかもしれません。




posted by ぷーすけ at 08:50| Comment(2) | 鉄道事業戦略